2012年10月15日

ゲニウス・ロキ〜覚えておくこと、思い出す場所:銀座ニューキャッスル

ゲニウス・ロキという言葉を知ったのは、何時ごろだったでしょうか?

私が多感な年頃だった頃、世の中はネオアカブームとやらで聞きなれない難しい単語を本当の意味もわからないまま勝手に解釈し使い倒すのが流行っていました。新しいお店をいっぱい知っていることをステイタスと感じたのと同じように、友だちより言葉をいっぱい覚えることで優越感を満たすことができた時代だったように思います。今考えると全然アカデミックじゃない(笑)

それはさておき、そんな時代の私は銀座の今はなき西武デパートで働いていて、同僚である友だちとお昼によくカレー…もとい「辛来飯」を食べに行ったお店がありました。
いつも混んでいて、それこそお昼時は外にずらっとサラリーマンが並んでしまうようなそんなお店で、1時間の休憩では必ず食べれるとは限らなかったのですが、しばらく食べないでいると無性に食べたくてたまらなくなる、そんな辛来飯を食べれたお店、それが、銀座1丁目にあった「ニューキャッスル」でした。

戦後の焼け跡の銀座でバラック同然の店を構えたところがスタートだったとおっしゃったおやじさんは、合気道の有段者だとは思えないのどかで優しい物腰の方で、年上の方に失礼かもしれませんが、本当にかわいい笑顔をいつもくださる方でした。対しておかみさんは、ちゃっちゃと小気味よい動きで気持ちよくお店を仕切っていられました。後を継がれた娘さんご夫婦が、先代にとてもそっくりで、いついってもアットホームな素敵なお店でした。
辛来飯は、小麦粉のルーの焦げた味がなんともいえないコクを出していて、決して洒落ているという味ではなかったけれど、懐かしくてあったかくて、思った以上に辛くって、食べているとなんともいえないじんわりとした気持ちがこみ上げるような素敵な一皿なのでした。

それが、今年7月末のこと。
お昼時だからとふらりと立ち寄った銀座で、さて何を食べようか?と考えていたところ、ものすごく辛来飯が食べたくて食べたくてたまらなくなり、何が何でも行くからね!とお店を訪ねていったのでした。
銀座の街を離れて、実に10数年ぶりです。
そしたら、これが閉店5日前。
閉店のことを全く知らなかったので、本当に何かに呼ばれたようなそんな切ない気持ちになり、久しぶりの懐かしい味に胸もおなかもいっぱいになりました。

さっき写真データを整理してたらその時撮ったお店のドアが出てきたので、早速懐かしくて行きたくなっています。でも、もう食べれないのね…辛来飯…もうやだ〜(悲しい顔)

newcastel.jpg

時が過ぎて、大好きだった場所、大事だったもの、何もかもがどこかへ消えてしまう事に、いつの間にか慣れっこになってしまいました。
淋しいけれど、しょうがない。
それでも、たまにこんな呼ばれ方をすると、ゲニウス・ロキっていうのが本当にいるような気がして、ちょっと鼻の奥あたりがツンってなりますよね。

ゲニウス・ロキとは、現代建築において「ある場所の特有の雰囲気」を指す言葉として使われている言葉です。ここでは本来のラテン語の「地霊」の意味で使ってみました。
posted by 都野兎 at 17:46| Comment(0) | TrackBack(0) | お散歩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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